射精する際の、男性にとっての性的快楽とは?

男性の方からコメントを頂いています。

「いくらなんでも男ばかりを過剰に否定しすぎでは?」

「そんなに射精を否定ばかりしないで欲しいですね。悲しくなるだけなので。」

「射精の快感をしょぼいしょぼいと仰っていますが、何もそこまで否定しなくても…と思います。」

改めて、自分の「射精への否定感」は、何に由来するのだろうかと考えてみました。

田中雅一氏による「射精する性──男性のセクシュアリティ言説をめぐって」では、射精について次のように記載があります。

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現代では女性に深い快楽を与えることこそ男性性の証明となっている。重要なのは長時間勃起するということと、女性に快楽をもたらすさまざまな技巧である。男性のセクシュアリティに関するこのような言説を「快楽ー支配系」とよぶ。

快楽ー支配系の場合、射精は勃起の終駕であり、性行為そのものの終止符である。その意味で勃起が象徴する男性らしさの否定を意味する。

射精は男性性の、永遠さを示唆するというよりはそのはかなさ、一過性を知らしめるのである

男性にとっての性的快楽は射精そのものにあるといっても間違いはないだろうが、それは快楽を与える存在たる男性性の否定を意味する。射精はしたがって快楽ー支配系の言説においては否定的な生理現象ということになる。

射精過程の第一の特徴は精液を排出するために各器官が収縮し、精液が尿道前立腺に集まるのだが、この段階で男性は、それまで我捜していた射精をもはやこれまでと感じるようになる。そしてついにガマンできなくなったときが、射精の瞬間です。

男性の60%は「自分のオーガズムは単調で瞬間的である」と思いこんでいる。たしかに肉体の反応も全身的なものではなく、女性のオーガズムとは比較にならないほど部分的に起こる感覚である。

絶頂期に達してからもふたたび快楽への階段をのぼれる女性と違い、男性器は射精後徐々に元へ戻るだけ。

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これらを考えると、射精への否定感は、「快楽ー支配系」に基づく、次のような考え方が根底にあると考えられます。

「いくら我慢しても結局は、単調で部分的な感覚を瞬間的に感じるだけで、射精が終わる度に、男性性のはかなさ・一過性を思い知らされること。」

我慢して勃起を保つ義務は、女の快楽への奴隷化であり、勃起の終焉を伴う射精は、男性性の喪失を意味しています。これが明白になるのは、射精時に「いってもいいか?」と女性に許しを乞う状況でしょう。

一方で、

射精には「排泄ー支配系」と呼ばれる、別の言説も存在します。

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(引用)生理的な欲求に基づく排世行為としての性行為という語りが位置する。そこでは女性は便所にたとえられる。そして、性行為自体が女性を辱め、汚す手段として位置づけられる。そこでは性行為はしばしば暴力的な形をとり、それが男性の快楽であるだけでなく、女性にとっての真の快楽でもあることが強調され、その結果男性の暴力が容認される。

ポルノグラフィーで強調されるのは、男性のオーガズムとしての射精ではなく、精液を受けることもまた女性の快楽であるというメッセージである。日本では顔射という行為に近い。精液を顔や口に受けるということ、それは男女間の力関係を確認する行為でもある。

ここでは精液の量が勃起に代わって男らしさの記号となっているのである。

「男」としての彼の立場は自分の思うがままに性的に振る舞うこと、そして自由に射精できること、という能力によって意味づけられている。相手の女性は排世物としての精液を受け止めるモノへと変容する。

男性にとっての性的快楽とはここで「支配する」ということと等価になる

性交が始まると快楽に専念して急速に自制を失うのは女性である、という説明も可能だ。性交の最中に女性をコントロールできるといえる。女性が排世ー支配系言説においても快楽を得るとされる。

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つまり、「排泄ー支配系」においては、射精を「男性性のはかなさ・一過性」を示すものと捉えず、「女性を支配することで、男性性を証明する行為」と捉えることができるわけです。

セックスにおける女性の価値に、初回ボーナスポイントがついて来るのは「排泄ー支配系」の観念があってのことでしょう。

射精に対して無条件に肯定感を保つには、必然的に「排泄ー支配系」への信奉が必要かもしれません。

最後に、

田中雅一氏による「射精する性──男性のセクシュアリティ言説をめぐって」では、最終章で「失神する男性」と題して、男性性の証明でもある性行為での暴力性、能動性や支配欲を放棄するだけでなく、射精をも放棄することで得られる快楽について触れています。

(引用)たとえようのない快感、幸福感に包まれて浮かんでいた。射精とはまったく違う感覚。それとは較べようもないほどの満足感と充実感で身体が満たされているのを実感した。性別をこえた快感。

個人的には、本サイトで射精を否定する文章の背後には、男性が、このような快感に目を向けて欲しいとの思いがあります。

 

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